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 ホテリエのための「キャリア《自分戦略》」

 

 

   あなたは毎日どんな気持ちで働いていますか?

  あなたの今の気分はいかがですか?

  あなたは自分の働き方に満足していますか?

 

    給料が上がらなくて悩んでいる

    入社以来頑張って来たのに、役職がつかない

    これから何を学んだらいいのか分からない

 

    自分の専門分野が見えてこない

    何のために働いているのか分からない

    何となく将来が不安に思える

 

 ホテルの仕事は好きなんだけれど・・・・

 

 

    不安感や閉塞感を覚えながら、日々働いている人が

  多いのではないでしょうか?

   

  こんなはずでは・・・・このままでいいの?・・・・

  もっと活き活きと自分らしく働きたい

 

 こうなっていたらいいなぁ、という「なりたい自分」になるために

 まずは「現在の自分」をありのままに受け容れてみましょう

 

 今まで自分は何をしてきたのか、どこが自分の強みか、

 これから何をしたいのか

 そもそもどんな「自分」になりたいのか? 

 

 「キャリア《自分戦略》」をじっくりと考えてみませんか? 

 

 

 

~はじめに 「自律的キャリア社会」に生きる

  

バブル崩壊の数年間、日本社会は荒波に揉まれ、揺れに揺れ

私たちを取り巻く環境は激変し、気がついたら見渡す景色は

様変わりしていた

 

「バブル崩壊」がもたらした変容は、社会構造に留まらず、企業の在り方

そして私たち一人ひとりの働き方までに及ぶものであった

 

企業主導の下で、満足できるキャリアを獲得できた社会

 

企業という存在、つまり自分ではない存在が自分を律していた

社会という意味合いからバブル前の高度成長期は「他律的キャリア社会

と言われている (図①参照) 

 

企業は社員が職務の遂行に専念できるような環境を整え、

社員はその期待に応えるがごとく、身を粉にして働いた時代

 

終身雇用、年功序列、企業内労働組合という「日本型雇用システム」

働く一人ひとりが守られ、安心して職務に打ち込め、その成果を受けて

企業も成長を遂げた時代であった

 

私たちは、日本型雇用システムの守護を受け、雇用は保証され、

昇給も叶い、結果的に満足できる生活と未来を手にすることが出来た

 

だが、バブル崩壊によって状況は一変した

 

その影響を正面から受けた企業が体力を消耗することにより

それまで順調に稼動していた「日本型雇用システム」の維持は困難に陥る

以前のように社員を手厚く守ることよりも、激変する環境の中で企業体

として存続することを優先せざるを得ない状況に置かれてしまう

 

終身雇用制度は揺らぎ、年功序列も崩れ始めた

私たちの一人ひとりが、もはや依存することなく

自分の「在り方」や「行く末」を考えて行かねばならない

「自律的キャリア社会」の到来である

 

らば、自分らしく働き、生きて行くためには何をしたら良いのか? 

 

下に列挙する自分戦略の一つ一つを

「自律的キャリア」を考えるヒントにして頂ければ幸いである

 

 

 

 

自分戦略 其の一 「現在の自分」はどんな人?」 *現状を把握する

 

  「自律」とはどういう意味があるのか、あらためて考えてみよう

 

広辞苑には

「自分で自分の行為を規制すること

外部からの制御から脱して、自身の立てた規範に従って行動すること」

とある

 

  自分で自分のことを考え、自己を確立してゆくのだ、と言う意識の醸成が

  自律的キャリア社会を生きる上で欠かせない

  

  行く末を、それこそ自力で切り拓いて行かねばならないのだろう

  楽ではないし、自己判断、自己決定、自己責任が伴う意味では

   気が重くなる話かもしれない

 

だが視点を変えてみれば、「他律的キャリア社会」では企業主導型

であった「自分のキャリア」が「自律的キャリア社会」の到来により、

本来の持ち主である自分に返還された、とも考えられる

 

自身が本来望んでいた働き方、納得できる生き方を追求でき実現

しても良い環境に今生きている

そういう見方もできるのだ

 

 

          

 

 

 

 

本当は、自分はどうありたいのか?

どうなっていたら自分は幸せと感じるのか

 

「こういう風になっていたらいいのになぁ。」という自分を

「なりたい姿」とか「なりたい自分」といい

それを具体的に思い描いたものをキャリアビジョン」という

      

 

 

 

 

  図②をご覧頂きたい

  未来に存在する「なりたい自分」になるためには

  先ず現在地の「現在の自分」がどんな人なのか、を良く知る必要がある

 

  「なりたい自分」創りのための土台であり、未来の自分への発進基地と

     なるからだ

  

  なりたい自分」は「現在の自分」があるから、である

 

   ここで3つの質問をするので心の中で答えてみて欲しい

 

   ①あなたは何が出来ますか? 出来ませんか?

   ②あなたは何がしたいですか? したくないですか?

   ③あなたにとって価値ある仕事は何ですか? 

                                役立っていると実感する仕事は何ですか?

                        ( エドガー・H・シャインの 「3つの問いかけ」

 

 

  「現在の自分」、は一体どんな人だろうか? 

  人は誰しも固有の名前を持っていて、他人と自分を区別できる

  便利なものであるが、この便利な「名前」がないとしたら、

 その自分はどんな人だろう

 そういう「名前のない自分」を敢えて考えてみる

 

 

  上記の3つの質問、シャイン3つの問いかけに自信を持って

  答えられただろうか?

 

   「名前のない自分」は何が出来て、何がしたくて、

   どんな仕事に価値を見出しているのだろう

  

   他にも、強み、弱み、得意なこと、苦手なこと、成功談、失敗談、

      免許、資格、スキル、などなど

   「名前のない自分」が持ち合わせている要素は沢山あるはず

 

   これらの全ての要素の集合体で構成されている「現在の自分」が

   「なりたい自分」への発進基地となる

 

   「現在の自分」をありのままに素直に受容すること

   それが未来へのヒントとなる

  

         

 

 

 

 

自分戦略 其の二 「現在の自分」は過去があるからだ」  *経歴の振り返り

 

は一体どうやって「現在の自分」は創られたのか?

 

キャリアとは、「轍わだちを意味する

自分という「車輪」が、別の場所から転がってきて「今、ここ」という

現在地に辿り着いた

 

ということは別の場所()から今の場所(現在)至る間

時の流れを経る中で自分という車輪は様々なものを身に付けながら

転がってきた、と言える  図④参照)

 

        

 

     

 

現在の自分」は過去があるから、であり

だからこそ残してきた轍を振り返ることで

現在の自分が保有する能力、興味、強み、弱み、価値観などが

見えてくるのだ

 

過去を振り返る作業は現状把握であり、「なりたい自分」に繋がる

大切な作業である

 

 

 

 

自分戦略 其の三 「過去を眺める視点は一つではない」 *視点を変える

  

  「過去を振り返って自分の強みとか能力を発見しよう、

  とは分かるのですが、自分の場合、強みなんて何もないです。

  決まり切った仕事を決まった手順で長いことやってきただけです。

  過去を振り返っても、大した強みなんてないですよ。」

 

  カウンセラーという職業柄、実に沢山の人と話し、様々な人生に出会う

  

  彼らの未来を考える上で、「過去の振り返り」は外せない作業なのだが

  自分の過去に「大した強みはない」と捉えている人が多い

 

  視点を変えれば、

  「決められた仕事を決められた手順で忠実にこなせることは私の強みです。

  ‘定型業務処理能力’は私の自慢の一つです。」と言える

  

  誰しも過去は一つしか持っておらず、それを今さら作り変えることは

  不可能であるが、過去を眺める視点は、如何様にも変える事ができる

 

一見、当たり前そうなことを当たり前のようにできる

 

それは、さりげなく当たり前にできるだけの‘能力’を持っている、

ということである

 

ハウスキーピングという慣習的業務を一例に挙げるならば

日々遂行する過程で知らず知らずのうちに段取り良く効率的に動き

無駄なく時間を使い、業務をこなしているのではないだろうか

 

「どうすればもっと上手くやれるか。成果が出せるか。」と自ら考える

 

「そのためには何が必要か」と模索し、そのための行動を起こしているならば

既に「自律型人材」としてジブンを制御できている状態と言える

その仕事ぶりには、安定感、安心感を覚えることだろう

 

小さな事でも構わない

視点を変えて自己の過去を振り返ってみよう

必ずや自分の「強み」に結びつく「何か」が見つけられるはずである

 

 

 

 

自分戦略 其の四  自分の「エンプロイアビリティ」を探せ

                            *「雇われる能力」の確立

 

 再び3つの質問。心の中で答えてみよう。

   ④あなたの強みは何ですか? 

   それはあなたの専門分野と言えますか? 

   ⑥それは社外でも通用するものですか

 

エンプロイアビリティ(employability)とは、「雇用される能力」のこと

転職支援の場では、「雇用可能性」や「転職能力」、

あるいは「転用可能能力」、「どこでもやって行ける力」という

使い方もしている

 

エンプロイアビリティの反対語は、

エンプロイメンタビリティ(employmentability)ある

「雇用する能力」という訳語を当てはめる

この2つはヨコの関係であり、天秤棒のように均衡が取れている

ことが理想である  

 

       

  

 

  日本型雇用システムが大きく揺らぎ始めたバブル崩壊後の環境変化の中

   注目されるようになったこの言葉

 

   万が一、勤務する会社が潰れたとしても、自分は潰れない

  自分は揺らぐことなく、地に足を踏ん張っていられる存在でいたい

 

自分を支えるであろうエンプロイアビリティを自ら磨き、確立しておくことは

自律的キャリア社会で生きる賢明策といえる

 

 

では、先の④⑤⑥の質問に自信を持って答えられたであろうか。

 

  今やスーパースターとなった大リーグ、シアトル・マリナーズのイチロー選手の

  エンプロイアビリティは何だろう?

 

  彼の職務内容(もしくは担当業務)つまり「与えられた仕事」は

  打撃では一番打者であり守備では外野手である

                                                出塁すれば、走塁も担当するが

 

  所属チームであるマリナーズにしてみれば、本来何が何でもイチロー

   である必要はない

  選手層の厚い大リーグのこと。攻走守そろった選手は他にもいるのである

 

  問題はイチローが一番打者を務めるとどんな打撃をするの? 

  イチローが外野を守るとどんな守備をするの? なのだ

 

  「与えられた仕事」をする人は自分以外にもいる

  大切なのは、自分が「与えられた仕事」をこなすと、

    どんな成果を出すか、である

 

  イチローの仕事ぶりは、周知の事実

  4年前には不滅といわれた年間最多安打という大リーグ記録を

   塗り替えてしまった

 

  誰が一番打者なら、誰が外野を守ったら、シアトル・マリナーズは

   安心できるのか? 

 

  やはりイチローが最適なのだ

  そこに彼のエンプロイアビリティ(雇用される能力)の豊富さを感じ取れる

 

  今まで目の前の仕事にどういう意識で、

   どのように取り組んできたのだろう? 

  結果、どんな成果を出したのだろう? 

 

  今一度振り返ってみよう

  そこに自分のエンプロイアビリティを感じ取れたとすれば、うれしい話である

 

イギリスの小説家であるアルダス・ハクスリーは次のように言った

 

   「経験とは振りかかった事ではなく

          振りかかった事にどう振る舞ったか、である。」  

 

 

どうして自分がやらなくちゃいけないんだょ?という

ラサレ感でこなした仕事

 

何とかしなくては!」と意識し持ち前の能力を駆使し、

工夫しながら仕上げた仕事

 

どちらも同じ「与えられた仕事」だが、振る舞い方によって

残る成果はまるで違うものになる

 

  

 

自分戦略 其の五  滅私奉公からか「活私貢献」  *「自分」を活かす  

 

  再び図①をご参照願いたい

  バブル崩壊前には、成長し続ける企業にとって労働力を

    賄う「人手」が必要であり、安定企業で定年まで勤め上げることが

  何よりの美徳とされ、そこへの入社には「学歴」がモノをいった時代

  

  入社から定年まで、一貫して「自己を抑えて会社のために働く」

  忠誠心旺盛な滅私奉公型の人材が重宝され、歓迎された時代でもある

  

  反面、厳しい経営環境が続く現在では、会社の維持発展のために

  どんな貢献が出来るのか、労働力としての人手ではなく、支える力が

  豊かで貢献力の高い「人材」が求められている

  

  今まで残してきた轍の過程で、何を学び、吸収し

  それをどういう形で企業の維持発展に役立てるのか

 

  「学歴」よりも、学んできた「学習歴」を尊重する時代

  自ら持てるものを活かし貢献手段に出来る

  「私」を活かして貢献して行く「活私貢献」型の人材こそ、

  どこの企業も今は欲しい

 

  イチローのように持ち前のエンプロイアビリティを存分に活用し

  貢献して行ける「企業必要人材」になれたら幸せかも知れない

  そういう「なりたい自分」になれたらいいし、なれるはずだ

 

 

 

 

自分戦略 其の六 自分のボスは「ジブン」である  *「自律型人材」になる

 

   自分は、本当はどうなりたいのか

  

    「こういう風になっていたらいいんだよ。」と

    誰かが明確に教えてくれるものでもない

  

    目的地を自ら定め、自ら到達手段を確保し、辿り着かねばならない

   半面、自分らしい辿り着き方ができる、とも言える

 

  組織の中での自分の姿、という捉え方の前に

  そもそも自分個人はどういうホテリエになりたいのか、

    あらためてじっくりと考えてみよう

 

  「このことならあの人しかいない。」と言われる位

  自己成長できればどんなに楽しいことだろう

 

  意識の中の自分のボスは「ジブン」である

  自分で「ジブン」を育てる意識を持つ

 

 自分でジブンをコントロールできる「自律型人材」であることは

 この時代を幸せに過ごせる前提条件だろうし

 その環境を整えているエンプロイメンタビリティ豊かな企業であるならば

 荒波に揉まれることはあっても沈没することはないはずだ

 

 

 

 

 

自分戦略 其の七  「なりたい自分」になる  行動を起こす

 

 「こういうホテリエになっていたらいいよなぁ」

 という「なりたい自分」をキャリアビジョンとして伸び伸びと思い描いてみる

 

 そうなっているために、足りないものは何か、しなくてはいけないことは何か

 それは経験だったり、知識だったり、資格だったり、あるいは資金かもしれない

 

 そして、未来の「なりたい自分」から「現在の自分」を眺めた時に

 自ずと浮かんでくる「足りないもの」を、行動を起こし、

 一つ一つ着実に獲得して行くのだ

 一歩一歩、足元を確かめながら山を登る感覚で (図②参照)

 

 明確なキャリアビジョンの実現に向かって、真摯に取り組んでいると

 するならば、働きがいを感じ、働く意味も目的も実感しているはず

 

 きっと傍目にも輝いて見えるだろうし、好刺激を受ける仲間も現れる

 に違いない

 

 日々のモヤモヤ感を払拭し、スッキリした気分で「なりたい自分」に

 向かって邁進して行く

 

 ホテル業界にも、ホテリエの個々が自己のキャリア形成に本格的に

 取り組む時期が到来している

 

  

 

   ~終わりに  

        「エンプロイメンタビリティ」あふれる業界になって欲しい ~

 

   エンプロイアビリティ(雇用される能力)の重要性が高まるにつれ

   働く側の目に映る企業の姿も重要性が高まって行く

 

   そこで働くことで、自分のエンプロイアビリティを発揮し貢献できたとしても

  「会社必要人材」 として正当に評価されるのか否か、

   その後の自己成長が期待できる職場か否か、という視点を

    大切にしようとする

 

   イチローは契約更新時に、結局、マリナーズに残ることを選択した

   

    他のチームでも十分通用する力のある彼にとって、マリナーズの何が

    彼を惹きつけたのだろう

   決め手となる何かを彼は確信したに違いない

 

 

   現在に至るまで、永くホテル業界に人材を送り出す側で仕事を

  続けている

 

   片やキャリアカウンセラー、産業カウンセラーとして、再就職支援や

    若者支援の場で実に沢山の老若男女に出会い、沢山の人生に

    遭遇してきた

   

    「やりたい仕事が見つからない。」「何をしたらいいのか分からない。」

   と思い悩む若者が増え続けその支援もして来た

 

   その一方で、早い時期からホテリエに憧れ、ホテリエになるために

   ホテル専門学校の門を 叩く若者とも永く接してきた

 

  思い悩む若者たちより、数段優れた職業意識を持ち合わせ

  学校の必修科目である長期のホテル現場実習に出て

  そこで業界の実態や辛い経験に遭遇しても

  それでもやはり「ホテル業界」を就職先として選択し

    人生設計の場として選ぶのだ

  

  にも関わらず、その後の彼らの決して少なくはない人数が

  将来が描けず夢破れ、希望が失望に変わり、失意と諦めを

    持って見切りをつけ、「こんな所にいてはダメだ。」と業界を後にする

  

     欠員補充は容易だとしても、より有能な意識の高い人材の確保は

    難易度を増す一方である

  

    少子高齢化が世界一を争う速度で進行している事実を考えれば

 人材の確保そのものに行き詰まる瞬間が近い将来必ず訪れる

 

 だからこそ、早い時期からホテリエとしての職業人生を選択した人たちを

 導き育成して行く必要がある

 

 彼らが、常に「企業必要人材」として正当な評価を受け、希望を持って

 やりがいを感じ、自分の仕事に誇りを持ちながら働ける環境創りは

 ホテル業界の喫緊の課題だと考える

 

 

 業の成長は、社員個々の自己成長があってこそ

 

 そこに気付き、他業界では自らのエンプロイメンタビリティ(雇用する能力)

 を高め、よ働きやすい、働き甲斐のある職場創りを本格的に

 始めている企業もある

 

 

 元来、有能な人材の集合体であるホテル業界が

 この分野で遅れを取ってはならない